月の庭

読書の記録と進捗メモ

海のある奈良に死す

東北住みの私には、地理的な部分でピンとこないところもあるのですが、知らない土地のことを知るというのも、読書の楽しみです。

 

読みながら、ああ、いつか行ってみたいなあなどと思うのですが、貧乏暇なし……いつになることやら。

 

海のある奈良、というのは、福井県小浜市を指すそうです。

 

というわけでこちらのお話は小浜、そして奈良。それから東京を結んで、事件が起きます。

有栖川有栖「犯罪学者火村英生シリーズ」の中の一冊です。

 

ちなみに、知っていらっしゃる方が多いとは思いますが、このシリーズの主人公はミステリー作家有栖川有栖です。ええ、作者と同姓同名。ですが、作者とは少し違う有栖さんです。

 

作中第一被害者となる作家、赤星楽が生前最後に残した

「行ってくる『海のある奈良』へ」という言葉が、とても印象的です。この台詞、いいですよねえ。

 

二重にも三重にも仕掛けられたトリック。

それに加えて、謎解きに関係しているのかしていないのかよくわからない火村と有栖の調査旅行。これがまた、楽しいし、読んでいて旅に出たくなってしまうんですけどね。

物語後半になるまで、まったく犯人がわからない私。

普通推理物だと、外れていたにしても「この人が怪しいなあ」という人物がいるはずなのに、この作品に関しては、本当にわかりませんでした。

 

まあ、あたったといえば、犯人ととある人との関係かな? 駄目だ、何を言ってもミステリーだから、ネタバレになりそう。

 

なんでだろうかと思うのですが、私、なんのかんの言って、有栖川有栖さんの作品、好きなんですよ。

全部読み終わったときの読後感も、好きなんですね。

確かに少しはっきりとしない部分もあるんだけど、そういう部分も含めて好きだなと思える、絶妙な感じ。

 

今回は、作家有栖の担当さんである、片桐さんもすごくいい味を出していて、彼の登場シーンが、妙にほっこりで好きでした。ああ、一緒に焼肉食べたい。

 

海のある奈良に死す (角川文庫)

海のある奈良に死す (角川文庫)

 

 

そして、私が読んだこのシリーズは四冊目となりました。

今まで読んだものも、載せておきますね。

 

朱色の研究 (角川文庫)

朱色の研究 (角川文庫)

 

 「朱色の研究」 これは、工藤工×窪田正考のテレビドラマでも取り上げられていたお話ですね。 

長い廊下がある家 (光文社文庫)

長い廊下がある家 (光文社文庫)

 

 これは、短編集になってます。最後、四作目の「ロジカル・デスゲーム」は短い作品ですが、犯罪学者火村英生の魅力が溢れています。このトリックはテレビドラマの中にも組み込まれていましたね。

 

暗い宿 (角川文庫)

暗い宿 (角川文庫)

 

 こちらも短編集。この本が私の有栖川有栖さん初作品だったと思います。

 

こんなところ。

気がついたけれど「学生アリスシリーズ」がないな。いつかそちらも読んでみたいけれど、うちの本棚には私がまだ読んでいない「ダリの繭」があるので、まずそちらを読もうと思います。

 

では!

灰色の動機

ある日のこと、本好きの旦那さんが亡くなったので、大量の本を整理したいのだけど、いるものがあったらもらってくれないか? と知り合いの奥様に声をかけていただきました。もちろん、見せていただきましたよ。

新書もあれば、昔話、神話、童話、時代物……とにかく様々な本を読む方だったのだなあ! と、感心しました。大きな蔵の中に本がズラリ!

小説の中ではとりわけミステリーがお好きだったようです。

有栖川有栖さんの「火村英生」シリーズやら、服部真澄さんの「佛々堂先生」なども、このとき頂いてきて、読みました。

全部頂いてくるには、我が家はとてもとても手狭だったため、手元にあったら読みそうだと思ったものだけ厳選して頂いてきました。

 

鮎川哲也さんの本は、何故か一冊だけ紛れ込んでいたという感じです。

鮎川哲也賞という推理小説の公募もあるくらい、ミステリーの世界では大きな存在なのでしょうが、実は初鮎川さんでした。

 

今回読んだ「灰色の動機」は鮎川さんの短編を集めた文庫本でしたので、初心者にも手に取りやすいものでした。

 

灰色の動機―ベストミステリー短編集 (光文社文庫)

灰色の動機―ベストミステリー短編集 (光文社文庫)

 

 

 まあ、本当に色んなテイストの短編が入っていました。

面白かったのはそうですね、一作目の「人買い伊平次」それから本のタイトルにもなっている「灰色の動機」です。

伊平次のほうは、作品の雰囲気が好きでした。シンガポールに滞在していた一人の若者が筆者の友人に宛てて書いた手紙によってお話が進んでいきます。

なかなか難しいですよ、この設定! これで推理小説なんですから。ちゃんと殺人事件がおきて、解決するんですからね。

それから灰色の動機は、トリックというか、二転三転していくストーリーが圧巻でした。読みながら「どこまで転がっていくのーーー?」と思いましたとも。

転がって転がって、その先で衝撃のラストです。どうぞ、手にとって楽しんでください。

 

それぞれの作品は、1940から1960年代くらいに書かれたものですから、どうしても古さを感じてしまうお話もありました。

「死に急ぐ者」などがそうでしょうか。

警察の別件逮捕での横暴ぶりとか、今だったらありえないよね? と思ってしまいます。それはそれで、その時代の小説なのだと思えばいいわけなのでしょうけどね。

 

ちょっとめずらしいSF風味のお話も一つ入っていました。

星新一さんのSSのような雰囲気でした。

 

いつか機会があったら、鮎川さんの長編小説も読んでみたいなと、思わせてくれる一冊でした。