月の庭

読書の記録と進捗メモ

十字架

中学二年生の、男子生徒が一人、自殺をする。 

遺書に書かれたクラスメイトの名前は四人。

 

 

重松清さんの作品が読みたくなって、図書室で借りてきた本です。

 

 

十字架 (講談社文庫)

十字架 (講談社文庫)

  • 作者:重松 清
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/12/14
  • メディア: 文庫
 

 

目を背けたくなるような事柄を、じっくりと正面から見据えた作品でした。

 

ナイフと十字架。という言葉が印象的です。

ナイフで刺されれば痛い。血も出るだろうし、激痛が走るだろう。致命傷になるかもしれない。けれども……一番痛いのは刺された瞬間。癒えてしまえば痛さを忘れる。

十字架を背負わされた者はどうだろう。十字架を、一生背負って生きていかなければならなくなった者たちは、どんな人生を送るのだろう。どんなに重くても、下ろすことができない十字架。

 

いろんな見方があると思いますが、この作品の最後は、決して重く苦しいだけのものではありませんでした。

 

死んでしまったクラスメイト「フジジュン」に、親友として遺書に名前を書かれた真田裕が、この物語の主人公であり、彼の一人称でフジジュンが亡くなってからの出来事が語られていきます。

 

十字架を背負ったのは裕であるかのように見えますが、読みすすめるに連れ、十字架を背負っているのは、彼だけではいないのだということに気づくでしょう。

 

重たい十字架を背負って、ただただ足元を見てあるき続けるしかなかったのに、ふと顔を上げると、他のみんなだって結構重たい十字架を背負っていることに気づく。

それってつまり、顔そあげることもできないほどの重みだったはずなのに、自分自身が成長して、強くなったからなのではないかと、私は感じました。

 

 

私には子どもがいます。

子どもには、傷ついたり重たい十字架を背負ったりするようなことのない、人生を送ってほしいと思いますが、人間は誰しも、生まれたときのまっさらなままでいることはできないのです。

 

人というものは――傷つき、血を流し、重たい十字架を一つ、また一つと背負い込み、ぼろぼろになって歩けなくなるまで、人生という道程をたどっていく他無いのでしょう。

 

綺麗なままでいようと思っても、時は待ってくれません。

 

選び取らなかったものに待ち受けているものは、淀んだ生と死です。

 

重たい作品です。

覚悟を持って、その表紙を開いてみてください。

 

さあ、どうぞ。

 

少年探偵団

 どういうわけだか家にもらわれてきた「少年探偵シリーズ」の中の一冊「少年探偵団」を、読んでみました。

 

 江戸川乱歩の小説は、小学生の頃何冊も借りて読んだのですが、記憶は綺麗サッパリ洗い流されてしまったらしく、悲しいほど覚えていません。

 

 なんとなく覚えていたのは、少年探偵団のリーダーである小林くんの変装くらい。だから「あ、これは小林くんだな!」というのはすぐに分かったのです。一つくらい覚えていてホッとしました。しかし、それ以外はドキドキで読むことができました。一粒で二度美味しい! 得した! と思うことにしましょう。

 

 そう言えば私は「ですます」調が子どものころとても苦手だったのです。しかし、何冊も借りてきては読んでいたこの「少年探偵シリーズ」、読み返してみたら「ですます」調ではありませんか? どういうわけだい、子どもの頃の私?

 

 きっと、苦手を感じさせないほどお話の世界が楽しかったのでしょう。

 

 

([え]2-2)少年探偵団 江戸川乱歩・少年探偵2 (ポプラ文庫クラシック)
 

  

 かつて私は、少女よりも少年たちの活躍するお話が好きでした。

 十五少年漂流記飛ぶ教室。パール街の少年たち。北風の後ろの国へ。

 洋物が多かった中で珍しくはまった日本の作家が、江戸川乱歩だったのですね。

 

 いろいろと派手な演出があるのですが、派手さに頼るのではなく、トリックもきちんとあります。

 そんな、いかにも子どもだましじゃないところが良かったのだと思います。

 子どもだましとか、子供目線とかが嫌いなひねた子どもでしたから。

 

 いくら派手な演出でも「えー? そんなことある? ちょっと無理じゃない?」と思うようなトリックには、もう一つ裏のトリックが用意されています。

「あ、なるほど! まんまとひっかかってた!」

 って思えるところがいいのかもしれませんね。

 

 それと物語の出だしがすごくうまいなあと思いました。

 

 真っ黒い魔物が東京中で目撃されるという、なかなかホラーチックな出だしです。

 

 明智小五郎や少年探偵、怪人二十面相が活躍していたあの時代の東京は、まだまだ黒い闇というものが、そこここに残っていたのでしょう。

 その僅かに残った暗闇の中に、闇が凝ってできたような……闇そのもののような魔神が現れる。闇の中からひょいと人々の前に姿を表して、そしてまた闇の中へと消えていく。

 黒い魔神のエピソード一つ一つも、とても良くできた怖いお話です。

 それらが次第に一つの事件へとまとまっていく感じが好きです。

 

 黒い魔神に始まって、インドからやってきた宝石にまつわる恐ろしい呪い、そして現れる怪しげなインド人。

 

 そんな派手な演出についつい読者の目は惹きつけられてしまいます。

 けれども真実は――トリックは派手なマジックではなく、その裏で地道に作り上げられているのです。

 

 確かに文章はどこか「紙芝居風」だったりして、一昔前を感じるかもしれませんが、それでもなお、読者をひきつけてやまないお話だと思います。

 

 こちらは2008年にポプラ文庫クラシックシリーズとして復活したものです。巻末に乙一さんのエッセイが載っていましたよ。乙一さんも『銃とチョコレート』なんていう少年と名探偵? が出てくるお話を書いてますものね。

装丁装丁や挿絵をそのままに、文庫で復活したシリーズや挿絵をそのままに、文庫で復活したシリーズ装装丁や挿絵をそのままに、文庫で復活したシリーズ丁や挿絵をそのままに、文庫で復活したシリーズ装丁や挿絵をそのままに、文庫で復活したシリーズ