月の庭

読書の記録と進捗メモ

灰色の動機

ある日のこと、本好きの旦那さんが亡くなったので、大量の本を整理したいのだけど、いるものがあったらもらってくれないか? と知り合いの奥様に声をかけていただきました。もちろん、見せていただきましたよ。

新書もあれば、昔話、神話、童話、時代物……とにかく様々な本を読む方だったのだなあ! と、感心しました。大きな蔵の中に本がズラリ!

小説の中ではとりわけミステリーがお好きだったようです。

有栖川有栖さんの「火村英生」シリーズやら、服部真澄さんの「佛々堂先生」なども、このとき頂いてきて、読みました。

全部頂いてくるには、我が家はとてもとても手狭だったため、手元にあったら読みそうだと思ったものだけ厳選して頂いてきました。

 

鮎川哲也さんの本は、何故か一冊だけ紛れ込んでいたという感じです。

鮎川哲也賞という推理小説の公募もあるくらい、ミステリーの世界では大きな存在なのでしょうが、実は初鮎川さんでした。

 

今回読んだ「灰色の動機」は鮎川さんの短編を集めた文庫本でしたので、初心者にも手に取りやすいものでした。

 

灰色の動機―ベストミステリー短編集 (光文社文庫)

灰色の動機―ベストミステリー短編集 (光文社文庫)

 

 

 まあ、本当に色んなテイストの短編が入っていました。

面白かったのはそうですね、一作目の「人買い伊平次」それから本のタイトルにもなっている「灰色の動機」です。

伊平次のほうは、作品の雰囲気が好きでした。シンガポールに滞在していた一人の若者が筆者の友人に宛てて書いた手紙によってお話が進んでいきます。

なかなか難しいですよ、この設定! これで推理小説なんですから。ちゃんと殺人事件がおきて、解決するんですからね。

それから灰色の動機は、トリックというか、二転三転していくストーリーが圧巻でした。読みながら「どこまで転がっていくのーーー?」と思いましたとも。

転がって転がって、その先で衝撃のラストです。どうぞ、手にとって楽しんでください。

 

それぞれの作品は、1940から1960年代くらいに書かれたものですから、どうしても古さを感じてしまうお話もありました。

「死に急ぐ者」などがそうでしょうか。

警察の別件逮捕での横暴ぶりとか、今だったらありえないよね? と思ってしまいます。それはそれで、その時代の小説なのだと思えばいいわけなのでしょうけどね。

 

ちょっとめずらしいSF風味のお話も一つ入っていました。

星新一さんのSSのような雰囲気でした。

 

いつか機会があったら、鮎川さんの長編小説も読んでみたいなと、思わせてくれる一冊でした。